変動金利の「5年ルール・1.25倍ルール」が効かなくなる日——50年ローン普及で長期化する金利変動リスク

ブログ

2026.08.28

home loan




住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査」(2026年1月調査)によると、新規に住宅ローンを組んだ方の75.0%が変動金利を選んでいます。前回2025年4月調査からは4.0ポイント低下したとはいえ、依然として圧倒的多数派です。変動金利には、返済額の急な上昇を抑える「5年ルール」「1.25倍ルール」という仕組みが備わっています。

ただ、実際に変動金利で借りている方にお話を伺うと、この2つのルールの存在自体をご存じなかったり、名前は聞いたことがあっても中身を正しく理解していなかったりするケースが少なくありません。実はこのルール、返済額の急上昇を抑えてくれる一方で、支払う利息そのものを減らしてくれるわけではないのです。しかも近年急速に広がっている「50年ローン」は、このルールが効き続ける期間そのものを延ばしてしまう側面があります。今回は、両ルールの仕組みと限界、固定金利への切り替えが「思ったより間に合わない」理由、そして50年ローンがそのリスクをどう大きくするのかを、順を追って見ていきたいと思います。

変動金利7割超という選択、その裏にある前提

日本銀行は2026年6月の金融政策決定会合で、政策金利を1.0%程度まで引き上げました。約31年ぶりの高水準です。
これを受けて、大手行の変動金利(最優遇金利)は2026年8月時点で年0.9〜1.2%台まで上昇しており、かつての0.3〜0.5%台とはすっかり水準が変わっています。
一方でフラット35(固定)は同時点で年3.290%と、現行制度で過去最高水準を更新しました。変動と固定の金利差は約2.2%まで開いており、この差の大きさこそが「変動一択」という選択を支えている構図と言えるでしょう。

「5年ルール」「1.25倍ルール」は、返済額を抑える仕組みであって、利息を減らす仕組みではありません

変動金利型ローンの多くは、半年ごとに適用金利が見直される一方、毎月の返済額は5年間据え置かれます。これが「5年ルール」です。さらに6年目以降に返済額を見直す際も、直前の返済額の1.25倍を上限とする「1.25倍ルール」が重ねてかかります。

ここで見落とされがちなのが、返済額が変わらない間も、元金と利息の内訳は金利に応じて刻々と変わっているという点です。金利が上がれば、同じ返済額のうち利息が占める割合が増え、元金の減りはじわじわ遅くなっていきます。さらに、利息額が毎月の返済額を上回ってしまうと、その差額は「未払利息」として繰り越されます。
全国銀行協会の説明によれば、未払利息が発生している間は返済額のうち元金に充当される部分がゼロになり、ローン残高が減らない状態が続きます。その後、金利が下がったり返済額の見直しで支払余力が増えたりすれば解消に向かう場合もありますが、そのまま解消されずに完済期日を迎えると、残っている元金とあわせて未払利息の精算が必要になるケースもあります。つまりこの2つのルールは、家計への影響を「先送り」してくれる仕組みであって、総支払額そのものを圧縮してくれるわけではないのです。

固定金利への「逃げ場」は、すでに狭まっています

変動金利が上がり始めてから固定金利への借り換えを考える、という判断には、実は構造的な弱点があります。変動金利は日銀の政策金利(短期金利)に連動する一方、固定金利は主に10年国債利回りなど長期金利に連動します。長期金利は将来の物価や政策の動向を先取りして動く性質があるため、短期金利よりも先に上昇しやすいのです。

つまり、変動金利の上昇を見てから固定への切り替えを判断した頃には、固定金利側はすでに大きく上がり終えているケースが少なくありません。実際、2026年8月時点で変動と固定の金利差は約2.2%に達しており、この差が縮まらないまま高止まりする局面では、「様子を見てから固定に乗り換える」という戦略そのものが機能しにくくなります。住宅金融支援機構の調査でも、変動金利型利用者の過半数が金利変動リスクに不安を感じているという結果が出ており、不安を感じることと実際に行動(固定への切り替え)に移すことの間には、タイムラグが生じやすいことがうかがえます。

50年ローンの急拡大が、リスクにさらされる期間そのものを延ばしています

住宅価格の高騰を背景に、返済期間を最長50年まで設定できる住宅ローンを扱う金融機関が急増しています。
住宅金融支援機構「2025年度 住宅ローン貸出動向調査」(2025年7〜9月実施、298金融機関が回答)によると、新規住宅ローンへの取組姿勢を「積極的」とする金融機関は71.1%にのぼり、そのうち商品力強化の方策として「返済期間35年超のローンの提供」を挙げた割合が75.7%で最多でした。さらに、金融機関が設定する最長返済期間を見ると、変動型で57.5%、固定期間選択型で55.2%の金融機関が「50年」を最長返済期間として提供しており、前年度調査で最多だった「40年」から、2025年度は「50年」が初めて最多となっています。
つまり、借り手個人の間で50年ローンの利用が過半数を占めているわけではなく、金融機関側の「商品として50年まで貸せる」という供給体制が急速に整ってきている、というのが実態です。とはいえ、住宅金融支援機構の別の調査(住宅ローン利用者の実態調査)では、実際に借りた人の返済期間が35年超となった割合も2023年10月調査の12.6%から2026年1月調査では23.4%まで上昇しており、超長期化の動き自体は借り手側でも進んでいます。

返済期間が長いほど、「5年ルール」の出番も増えます

35年ローンであれば、5年ルールによる返済額の見直しは、多くても7回程度です。これが50年ローンになると、単純計算で10回前後まで増えます。
見直しのたびに1.25倍ルールが働くとしても、未払利息が発生・繰り越される機会そのものが増えることを意味しますから、金利上昇局面が長引けば長引くほど、未払利息が累積しやすくなり、完済までに解消しきれなかった場合の精算負担も大きくなりやすいといえます。

総返済額への影響も見逃せません。借入額1億円・金利0.9%のケースで試算すると、35年返済では総返済額が約1億1,700万円であるのに対し、40年では約1億1,900万円、50年では約1億2,400万円となり、35年との差は約700万円にのぼります。
月々の返済額を抑えられる効果と引き換えに、支払う利息の総額と、金利変動にさらされる年数の両方が増えてしまう点は、借入時にしっかり理解しておきたいところです。

今からできる備え

・借入時点で、金利が1%・2%上昇した場合の返済額シミュレーションを行い、その水準でも無理なく返済できるか確認しておく
・返済期間を長く設定する場合は、当初から「教育費が落ち着く時期」「昇給のタイミング」など、繰上返済を行えそうな時期をあらかじめ想定しておく
・未払利息の扱い(発生条件・最終回での精算方法)は金融機関ごとに異なるため、契約前に約款や重要事項説明書で確認しておく
・固定金利への切り替えは「金利が上がってから」ではなく、長期金利の動向も定期的に確認しながら、判断のタイミングを前倒しで検討する
・変動と固定を組み合わせるミックスローンも、金利上昇リスクを部分的に平準化する選択肢として、検討する価値があります

50年という期間は、住宅ローンを組むご本人だけでなく、その家計の将来設計そのものに関わる長さです。「月々の負担が軽い」という入口の魅力だけで判断せず、金利変動にさらされる年数と、その間に積み上がりうる未払利息まで含めて、借入時点で見通しておきたいところです。

参照

住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2026年1月調査)」

住宅金融支援機構「2025年度 住宅ローン貸出動向調査」

住宅金融支援機構「住宅ローン関連調査」一覧ページ

全国銀行協会「変動金利住宅ローンの未払利息とは?」

日本銀行 金融政策

三菱UFJ銀行「【2026年最新】住宅ローンの金利は今後どうなる?」(変動金利の基準金利見直しについて)

吉野裕一

この記事を書いた人

吉野裕一 吉野裕一

人生100年時代を安心して過ごせるようにライフプランにあったファイナンシャルプランをご提案しています。相談実績も多数あり、研修やセミナーの講師、コラムなどの執筆もしています。気軽にお問い合わせ下さい

この記事をシェアする